大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

函館家庭裁判所 昭和45年(家)438号 審判

申立人 渋谷幸次(仮名) 昭四三・七・四・生

右法定代理人親権者父 渋谷一(仮名)

同母 渋谷光枝(仮名)

主文

申立人の名「幸次」を「幸次郎」に変更することを許可する。

理由

申立人は、主文と同旨の審判を求めたので、その当否について判断する。

当裁判所の調査した結果によれば、申立人は昭和四三年七月四日父渋谷一、母渋谷光枝の二男として出生し、同月二〇日父名義の出生届にもとずき申立人の名が幸次と戸籍に記載されたこと、しかし、当時父は出張中で上記出生届は実際には母がこれを記載して届出たこと、父は出張先から母に対して幸次郎と命名して届出るよう指示したが、当時母は産後日が浅くとりこんでいたため、父の指示した名が幸次であると思い違え、自分もその名が良いと考えて出生届に申立人の名を幸次と記載して届出たものであることが認められる。

ところで、出生した子の名については、本件のように父母が共同親権者である場合には、父母が協議のうえ、命名すべきものであり、その一方の意思に反して勝手に名の届出がなされた場合には、他の一方の意思にもとずくものである限り、その届出は有効ではあるが違法であるから、父母の双方が協議のうえ改めて名を定めた場合には、改名にともなう弊害が顕著である等の特段の事情がないかぎり、その名に改名する正当な事由があるというべきである。これを本件についてみるに、申立人の名については共同親権者である申立人の父の意思に反して届出がなされた名であつて、その後申立人の父母において、申立人の名を幸次郎と改めることに協議したうえ本件申立をなしたものであること、また、申立人は幼年であるうえ、現在の名「幸次」に「郎」を付加した名に改めようとするに過ぎず、改名にともなう弊害は殆どなく、その他改名を不相当とする特段の事情も認められないから、本件申立にかかる改名については戸籍法第一〇七条二項にいう正当な事由があるものと認められる。

よつて、本件申立は正当であるから、これを認容することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 竹田央)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例